12/13シーズンも終了し、ジョゼ・モウリーニョ監督が退団を表明し、先日チェルシーへの復帰が決まった。
新監督や補強の噂などが紙面を賑わせているが、ここでは今シーズンの選手個人の個人的な基準と偏見に基づき、評価を記したいと思う。
この評価は今シーズンに限ったものであり、モウリーニョ政権下のマドリーの3年間の総括は、Part2で述べたいと思う。

評価は10点満点で、平均点は6点。
評価対象としたのはトップチームに籍を置く選手のみで、トップチーム専業となっていないモラタ、ナチョなどは対象から外した。
また、この評価は各選手の個々の期待値に基づく評価であり、1試合のレビューのような選手間の相対的なものではないことをご理解いただきたい。


シーズンの結果を受け、やや厳し目に評価を行った。
一部の低評価の選手のファンの方には、心苦しい思いもあるが、正直な気持ちを記したつもりである。
あくまでも私の個人的な評価であり、「こんな意見もあるのだな」と、世界中の無数のファンのひとつの声として、受け止めていただければ幸いである。


GK

1. イケル・カシージャス 4.0

前半戦は不調で、例年のような神がかったセーブは見られず、骨折で離脱後はモウリーニョとの確執が伝えられ、出場なし。
私は本来、想像しか出来ないピッチ外のことで選手を語るのは好きではないが、今期の彼に関しては触れないわけにはいかない。
自らの恋人がロッカールームのTVで赤裸々に暴露するなど問題外の事態も起こり、チーム崩壊に対してのの責任がゼロであるということはありえず、キャプテンシーを問う意見も散見された。


25. ディエゴ・ロペス 6.5

カシージャス離脱後にチームに降臨した救世主。
セカンドキーパー以上の存在感で、ゴールマウスに特上の安心感をもたらした。
技術的には横からのボールに対する飛び出しの判断と、守備範囲の狭さがやや目立ち、カシージャスが万全ならば出番はないであろうが、至近距離からのシュートへの強さはカシージャスに負けず劣らずで、ユナイテッド戦での活躍は今期のハイライトだった。


13. アントニオ・アダン 4.0

チームのゴタゴタから一躍時の人となり、気の毒な側面はあったものの、経験不足というより実力そのものに大いなる疑問がつくパフォーマンスで、試合に出ては致命的なミスを繰り返した。
マドリーのセカンドキーパーでどうのというよりも、まずはプリメーラのゴールマウスを守れるレベルへと進歩したい。


DF

2. ラファエル・ヴァラン 7.0

大ブレイクという言い方よりも、クラシコでの活躍でそのポテンシャルが全世界に知れ渡った、というほうが適切か。
昨年から安定したパフォーマンスを見せていたが、今期はビッグマッチでも起用され、その末恐ろしいタレントの片鱗を魅せつけた。
まだ高い身体能力に任せて守る場面があり、より頭を使って守れるようになり、攻撃面での組立ての貢献度が上がれば、世界一のセンターバックになれるだろう。
とはいえ、現段階でもメッシを抑えられるレベルであるのだから、恐れ入る。


3. ぺぺ 6.5

EUROでの好調を維持し、前半戦はほぼ完璧。ケチがつきはじめたのは、手術で離脱してヴァランにレギュラーを奪われてから。
モウリーニョについて移籍が濃厚かと思われたが、カシージャスを擁護する発言を行い、その可能性はほぼ消滅した。
パフォーマンス自体に特に問題は見られるような部分はなく、来季、仕切りなおしか。


4. セルヒオ・ラモス 6.5

ピッチ内では序盤〜中盤にセットプレーでマークを外されるシーンがやや目立ったものの、終盤戦の安定感は見事。
カシージャスほどではないが、彼の場合も、問題はピッチ外の側面か。


5. ファビオ・コエントラン 6.0

マルセロがシーズンの大半を離脱した今シーズンは、マドリーの左サイドはほぼ彼が担当。
昨年よりも軽率なミスは減り、安定感は増した。
しかし、攻撃面が特徴と言われながらも得点に繋がるような貢献はあまり出来ず、パフォーマンスに頭打ち感があったのもまた事実。

11. リカルド・カルバーリョ 5.0

出番自体は少なく、出場した試合ではミスも散見されたが、2シーズンほぼ控えでありながら、問題行動はなく、チームの一員に徹した。


12. マルセロ 5.0

怪我が治癒後もなかなかコンディションが戻らず、パフォーマンスの印象がほとんどない。
モウリーニョ就任1年目の輝きを、そろそろ取り戻したい。


17. アルバロ・アルベロア 5.0

CLの序盤あたりは怪我明けでやや不安定だったものの、徐々に安定感は取り戻すも、去年のような出来ではなかった。
やや見受けられるスピードの低下以上に目立ったのは攻撃面での貢献度の限界で、ディ・マリア不在であると右サイドはそれだけで機能不全に陥った。


18. ラウール・アルビオル 5.0

このブログでもさんざん「やらかしオル」などと書いたが、出てくる度に緩慢なプレーが目立ち、マドリディスタの失笑を買った…のだが、継続して出場機会を得た終盤は安定感を試合ごとに上げ、コパ・クラシコはMVP級の活躍を披露。
シーズン通してのミスは試合勘の問題なのかという気分にさせてくれ、来季への希望はかろうじて繋がった。


MF

6. サミ・ケディラ 5.0

EUROの好調をそのまま維持した前半戦、飛び出しがアクセントになりかかっていた中盤戦、そして、無意味な過度の攻撃参加でチームのバランスを揺るがした後半戦。
彼自身のプレーの幅の拡大がチームの利益に結びついておらず、むしろマイナスに左右している。彼の代役は事実上不在だったことが、彼が自分のプレーを省みる機会を奪ってしまった。
ややリスクのある縦パスを通せるようになるなど、成長の後は見えるものの、ビッグマッチでは頼りない。


8. カカ 4.5

時折重要でない試合で見せる「かつてのカカ」の片鱗が、加入して4年経った今でも、ビッグゲームで見られることはなかった。
中盤戦ではやや気持ちが切れたような面も。


10. メスト・エジル 4.5

リーガではアシスト数はイニエスタに次ぐ2位。私自身、私の彼への評価が少々辛口であるのは自覚している。
ただこの評価は、メスト・エジルという個人の選手への評価と言うよりは、「レアル・マドリーの10番(のレギュラーポジション)」としての評価だと認識していただきたい。

プレイヤーとしては、終盤はシュート意識がやや目立つようになるなど、意識の改革を図っているように見える。
彼自身は、非常に現代的な選手だと思う。今までこのポジションに彼のようなスピードのある選手は少なかったし(私は、彼の一番の武器はこの部分ではないかと思う)、守備も精力的だ。

とはいえ、CLのユナイテッド戦、ドルトムント戦に代表されるように、重要な試合になればなるほどバイタルエリアの彼は行方不明になった。
左足しか使えない、またシュート意識が高くないため最初からパスだとわかる持ち方のためプレーが読まれやすいシーンが目立った。
しかし、何より歯がゆいのは、前を持った時に相手の守備に、「少しでもスキを見せたらやられる」という危機感を与えられないことであった。

トップ下というポジションは古今東西、そのチームの中でずば抜けて上手い選手のみが担当し、攻撃を司ることを許される、特別中の特別なポジションである、と思う。
私はレアル・マドリーが世界一のクラブだと思っている。そしてそのトップ下には、世界一サッカーがうまい選手が見たい。世界一の才能が輝く瞬間が見たい。
わがままな願いかもしれない。けどレアル・マドリーには、そのわがままを聞いてほしい。かつてジネディーヌ・ジダンがそうであったように。


14. シャビ・アロンソ 5.0

負傷を抱えながらのプレーが続き、1月にはモウリーニョとの2者会談の末、ビッグゲームでのみプレーすることに。
パスワークに冴えが見られず、またらしくないイージーミスも増えた。
このパフォーマンスの低下が、怪我が原因であるもので、衰えが原因でなければよいのだが。


15. マイケル・エッシェン 5.0

中盤としては、序列が本職でないぺぺより下、という事実がすべてを物語る。
右サイドバックを文句を言わずこなしたことは評価出来るが、パフォーマンスにはかなりムラがあった。


19. ルカ・モドリッチ 6.5

前半戦は周囲との呼吸が合わず苦しんだが、中盤戦以降は彼の創造性を存分に発揮したプレーを見せ、プレミア最高のプレーメーカーであった実力を証明した。
来季は、アロンソを脅かす存在へとなれるかが試される。


21. ホセ・カジェホン 5.0

切れのあるライン突破はあったものの今期はシュートが決まらず、ディ・マリアを脅かす存在には、今年もなれなかった。


22. アンヘル・ディ・マリア 6.0

マドリーの右サイドで唯一ボールを運べる選手であり、彼の存在そのものが、右サイドが機能するか否かのキーであった。
またプレーがやや雑な時がまだ見受けられるものの、今期はプレーのムラが以前よりも少なくなり、カウンター時のスピードは相手の脅威となった。
その一方、引かれた相手には弱く、一本調子なプレーも相変わらず。


FW

7. クリスティアーノ・ロナウド 7.5

左サイドの相棒がマルセロからコエントランに変わったこともあり、プレーの質が変化。
マルセロのような左サイドでの突破力や持ち上がる力を有していないコエントランとのプレーでは、左サイドバックがボールを持ってる間に中にポジションを移す事ができず、これまでよりもプレーのスタートがよりライン際に近づき、やや強引なミドルが増える結果となった。
終盤には怪我の影響からかパフォーマンスがやや低下したが、彼自身は相手の絶大なる脅威となる存在であるモンスターアタッカーであることは変わらなかった。


9. カリム・ベンゼマ 4.5

コンディションが整えば、組立段階での貢献が高く、マルチな才能を示した…ものの、ストライカーとして評価するならば、スマートすぎるというか、ギラつくような得点への意欲は希薄だったと言わざるをえない。
トップに置くよりも、2列目で自由にプレーしたほうが、彼の器用さはより活きるのではという気もする。


20. ゴンサロ・イグアイン 4.0

CLの決勝トーナメントでは19試合で2ゴール。この数字が物語るように、とにかく重要な試合になればなるほど彼のシュートはキーパーの正面に飛んだ。
得点が取れなくても起点となれるベンゼマとは異なり、彼の場合はゴールをするか、試合に存在しないかのどちらかだった。
昨季もゴール数以上に外したシーンが目立ったが、今期はそのゴールも決まらなくなった。
そのパフォーマンスには、サンチャゴ・ベルナベウでもブーイングが起こった。




監督 ジョゼ・モウリーニョ 4.5

(繰り返すが、ここでの評価は、3年間の総括ではなく、今期限りのものである)

3年連続のCLベスト4は、素直に称賛されるべきであるが、評価出来るのは今期はこの一点のみ。
シーズン序盤からラモスと揉め、年末はカシージャスをベンチに落とし、そこから彼自身がタブーとしてきたはずのマスコミへの選手批判が常態化。
会見を追ってきたが、内部のゴタゴタという面では、実に話題の尽きない1年であった。
メディアを敵に回したこともあり、現在はチーム崩壊のすべての原因のように報じられている。
チームが、モウリーニョ派とカシージャス派に分裂した…などと未だに紙面を賑わせてる。

私自身は、チーム崩壊はチーム全体の責任であり、モウリーニョがすべて悪であるとは思わない。
しかしながら、それまでの一番の強みであったはずの人心掌握に失敗し、チームは彼の手から離れていった。
補強の失敗(彼がGM的な役割であり、その責任もある)からマンネリズムに陥ったチームを鼓舞するどころか、過激な発言が火に油を注いでしまった。

また何よりも、ピッチ上で、彼自身が「(戦い方の)オプションを増やす」と表現した目標が達成できず、出てくる相手には強いものの引かれた相手には途端に手詰まりとなるチームは相変わらずで、ユナイテッド戦あたりからこの弱点が全世界中に浸透した感もあり、チームの閉塞感を打開することが出来なかった。
プレーのエンターテイメント性は堅守速攻の彼のチームには求められないにせよ、勝利したとしても彼のスタイルがはまって勝利するような内容に充実した試合は激減し、かろうじて結果のみがついてきたような試合も多かった。



おわりに

前述のように、私は選手をピッチ外の行動で評価するのは好きではない。本当に好きではない。
フットボーラーは試合中の90分間のためだけに生活を捧げており、そこで見せるものがその選手の集大成であり、スポーツ競技者としてのすべてだと思っている。この考えはおそらく一生変わらない。
しかしながら、チーム内の混乱により、チームのスポークスマン的な意味もある監督はともかく、選手の評価項目までピッチ外の話題を入れなければならないようなシーズンであったことが、極めて残念である。