ほんの数日前までほとんど意味をなしていなかった数字が、急に両チームのファンにリアリティをもって迫って来ている、という印象を受ける。

そう、マドリーとバルサの勝ち点の話だ。

これを書いている時点(3月24日)での勝ち点差は6。
6、という数字は、フットボール・ファンには勝ち点差が、5、とか7よりもインパクトのある数字だと思う。
おそらく「2試合マドリーが負けて、2試合バルサが勝てば追いつける。」と、勝利すれば勝ち点3が得られるフットボールの世界において、逆転する絵を具体的にイメージしやすいからだと思う。

私自身は、現段階での数字は、さほど気にしていない。リーガは残り10試合あり、本来であれば優勝云々が本格的に取りざたされるには現段階でもまだ早いと感じているからだ。とはいえ、ライバルがマドリディスタから見れば迫ってきて、バルセロニスタからすれば視野に再び捉えて、全く気にならないわけがない、という意見ももっともだとは思う。


ここで、チームのピークと、底の話を少ししたい。

フットボールを行うのは人間であるから、長いフットボールのシーズンで常にフィジカルコンディションを100%に保ち続けることは不可能だ。そこで、ビッククラブはどこにピークを持っていくかを定めると同時に、どこにコンディションを落とす時期を持っていくか、計画的に決めていると思う。


バルセロナの場合は、私自身マドリーの試合ほどバルセロナの試合を追っていないので推測の域を出ないことを承知で書くが、1月の下旬あたりから2月の終わりくらいまでが底だったように思う。

自分自身のログを見返してみると、2月5日のソシエダ戦のレビューがこれ。

バルサのスタメンは…と。
posted at 06:04:54

バルサ、今日縦に速いような。
posted at 06:10:16

ただ今日バルサちょっといつものどーんと構えてる感があんまりない気がするんだよな…
posted at 06:13:29

今日、ソシエダチャンスあると思うよ。バルサそこまでよくないもの。
posted at 06:21:12

なんか今日バルサ、距離感がちと遠くないかい?選手間の。
posted at 06:23:07

今日バルサ特別いいわけじゃないと思うんだけど、どうなんです?いつも見てないからそれはわからないですが。
posted at 06:48:36

おわり。バルサも、苦しい試合を制す。
posted at 07:54:13


そして、2月15日のレバークーゼンとの1st Legのがこれだ。

バルサを見ますよん。
posted at 04:50:48

バルサ、チャビは?
posted at 04:54:03

バルサ、いい時と比べるとやっぱり距離感が遠い気がするんだよな…
posted at 04:55:07

まぁバルサのFKはあんまり入らないからこういう位置でのファウルはそんな気にしなくていいんじゃない、多分。
posted at 04:57:20

うん、バルサ、いい時の彼らのスタイルである細かいトライアングルを作る動きが少なくて距離が遠い。
posted at 05:07:50

バルサ、身も心も雨も相まって寒いって感じだね。
posted at 05:13:05

バルサは3バックにしたほうがいいんじゃないかな。中盤の運動量足りてない。
posted at 05:16:16

バルサはコンディションのピークをCL決勝とか超終盤に持ってくるプランで、今を底にしているのかな。普通はヨーロッパのない1月とかに底にするんですけど。
posted at 05:25:54



最後の最後にこれから書くことのあらすじを書いてしまっていたが、この時感じたのは、バルセロナはチームのピークをリーガの終盤の終盤やCLの決勝あたりに持ってきていて、CLの決勝トーナメント開始時にはまだ底状態だったのでは、ということだ。

勇気のいる決断である。
ピークを終盤の大事な時期に、といえば聞こえはいいが、わかりやすくいえば、それまでにリーガの可能性が消滅したり、CLで敗退したら台なしだ。
リーガは試合数が決まっているからまだいいが、CLの場合は、負けたらそこでおしまいだから、通常は決勝トーナメントに進出するチームはトーナメント開始の2月末にはなるべくベスト状態のチームを持って行こうとする。ただ私には、グアルディオラはあえてチームの調子のピークをもう少し後ろにし、決勝や準決勝にチームのMAXを持って行こうとしているように感じられた。
現に、2つめのレバークーゼン戦、使おうと思えば使える状態だったにもかかわらず、ピケとチャビはドイツ遠征のメンバーに入りながらスタンド観戦である。
確かに、当時けが人が多い時期で、寒くてコンタクトプレーもきついドイツで無理をさせたくなかったことはあるかもしれない。しかし、ベンチにも入れないとは、徹底している。

ここで、ペップがカタランで言ったとされる、「リーガはもう無理。」について考えたい。

今となっては、ペップはこうなることを見越して選手を落ち着かせるために言った、との見方も出ているようだが、彼は正直な男だから、そうなればいいな、とはかすかに思いつつも、正直な気持ちの吐露だったように思う。

彼の中では、この時点ではあまりにマドリーが中盤ハイペースで飛ばすので、上に書いた「リーガの可能性が消滅」したように感じたのだと思う。

ただその裏では、エネルギーを蓄えた上でMAXの状態で迎えられるであろうCLへの自信が見え隠れしている。



さて、では一方のマドリーはどうだったのか。

「おそらく」リーガのクラシコの後の年末年始である。

ここまで来て、「おそらく」はないだろうと感じられた読者の方も多いと思う。
しかし、今季のマドリーは、少なくともバルセロナほどは、明確に「底だ」と感じられるときはなかったのだ。

何しろ、例の連勝記録は、バルセロナにリーガで負けた直後から始まっているし、私が、底だ、と判断するに至った年始の不安定さも、ウィンターブレイクを経たことにより身体のコンディションが整っていない、という見方も可能ではあるからだ。
さらに、1月にコパ・デル・レイのクラシコ連戦が行われたことにより(18日、25日)、マドリーの面々は、そこでアクセルを踏むことを余儀なくされているから、実質的に「底だ」と感じられたときは数試合しかなかった。
また、2nd Leg後は、敗退はしたものの内容的に充実した試合ができていたこともあり、マドリーはアクセルを強めた感がある。

しかしながら、ヨーロッパのカップ戦がない1月は、多くのビッククラブが意図的にコンディションを落とす時期として選ぶ時期だ。
特に、ユベントス時代のカペッロに代表されるように、序盤圧倒的に飛ばしてリーグ戦は他のチームが諦めてしまうほど勝ち点を稼いで逃げ切ってしまうタイプの監督は、この傾向が強い。
だから、CLではリーグ戦の実績に反しさほど…という話は、また別の機会にするとして、モウリーニョがこの時期にある程度手綱を緩めたことは、ほぼ間違いないと思う。


だが、この後どうなるかは、正直言ってわからない。
なにしろ、「底」と思われる時期が思ったよりも短かったので、ピーク、と「底」を素直に当てはめていいものなのか、迷うのだ。
この例に当てはまるのであれば、もうコンディションの底は終えました、リーガもあとは残りの力を振り絞って…ということになるが、それにしてはガス欠がちょっと早すぎるし、今季のプライオリティはリーガ、と最初から宣言しているモウリーニョにしては、あまりに無策だ。

私自身は、最初の「底」があまり大きくなかった分、小さな「底」を2つ迎えることにしていて、今が2つめの「底」に近いのかな、などと予想をいくつか立てたりしているが、今後どうなっていくかははっきりいってよくわからない。2つ目の「底」かもしれないし、ガス欠かもしれないし、それ以外かもしれない。それは今後のマドリーを追っていってはじめてわかるのではと思っている。


では、勝ち点の話に戻ろう。

私が冒頭に、現段階での数字は、さほど気にしていない、と書いたのは、以上のような考えを踏まえ、「これまでマドリーが計画的にこれまでの数カ月をいい状態で迎えて勝ち点を積み重ねて差を広げてきたのだから、当然その逆もあるよね。」という想いからである。

もっとシンプルに書くと、「これまでマドリーが突き放す時で、今はバルセロナが追う時なのかな」、という考えだからである。


実はTwitter上で、私はマドリーのCLのCSKAモスクワ戦 2nd Legの前、どこか楽観的な空気が世界中にあるなか、かなり悲観的な予想をしていた。
負けたらすべてを失う戦いはコパ以来、だとか、CSKAの一発の怖さ、ももちろんあったが、そろそろ、この上り調子の状態ではなくなるのではないか、と考えていたからだ。
それは、内容的には決して満足の行く出来ではなかったものの、ある種、効率良く、「勝ってしまった」ベティス戦が直前の試合だったことも、私の悲観論を後押ししていた。

幸いにもマドリーはCSKA戦でつまづくことなく、つまづいたのはその次のマラガ戦だったわけだが、マラガ戦が終わった後の私の感想は、「これがCSKA戦じゃなくてよかった。」が一番大きかった。


また話が逸れてしまったが、仮にこれまで書いてきた通りだったとしても、いい状態のチームが負け、悪い状態のチームが悪いなりに勝ってしまう、ということは、往々にして起こり得る。
バルセロナがここで負け、マドリーが勝ち、再び勝ち点差が9に広がったら、バルセロナはガックリと来るだろう。

少なくともリーガに関しては、トータル38試合の合計の勝負になることは変わりなく、ピークをどこに持って行こうがどっちがよいとか悪いとかは私はないと思っている。チームによって、やり方も違う。それだけだと思っている。


リーガも残り10試合、バルセロナはこの予想の通りにこれからどんどんコンディションを上げていくのか、またマドリーがこれから残りのシーズンをどのように過ごすのか、興味は尽きない。