試合としてはそこまで面白くはないが、ドラマ性は完璧。そんな試合だった。

世界中のフランス、そしてジダンファンがジネディーヌ・ジダンという生ける伝説の正真正銘のラストダンスに期待し、胸躍らせ、最後に言葉を失った。

マルダが得たPKは疑わしいことこの上なかったが、彼が描いた完璧なクッキアイオはそのことを忘れさせてくれた。僕は彼がこの種のボールをPKで蹴ったのは初めて観た。奇しくもこの技を得意とするトッティの目の前で。
ブッフォンの跳んだ方向は間違っていなかった。彼はほとんどのPKを、この大会ではすべて、彼の跳んだ方向に蹴っていたのだから。

後の「悪役」マテラッツィが同点ゴールを決め、際どいシーンが続くも際どいだけで終わるある意味決勝らしい展開の中、彼の技巧は輝く。

しかし彼の不幸は、彼のチームの彼をサポートすべきサイドプレーヤーが決勝にふさわしくないプレーヤーだったことだ。

リべりは戦況をかき回すことが出来るがそれだけで、将来性は感じたものの現時点では発展途上といわざるを得ず、マルダに関しては良くも悪くも小さくまとまっている印象で、リべリと違ってプレーに正確性はあるものの、彼があのPKを奪取した選手として人々の記憶に刻まれるかは甚だ疑問だ。この試合に限ってはよかったと思うが。

ロベール・ピレスかリュドビク・ジュリが、あるいは両方がジダンの脇を固めていたら…と思わずにはいられなかった。

後半になってから、フランスは勢いを増す。
前半のやつがなければ絶対にPKだったであろうマルダの突破。
なんで中央がリベリしかいないんだ!というようなシーン。

そんななか、ヴィエラ負傷。サイドとは対照的に充実しているフランスの中央部の選手を一人失う。変わったディアッラは守備はよくがんばったと思うが、攻撃の局面での物足りなさはいかんともしがたい。

それでもフランスは攻める、というかイタリアが攻めれない。
名将リッピは早めにカードを切るも、思ったほどの成果は出ない。

後半終了まで残り少なくなった中、ジダンとカンナバーロが交錯し、ジダンが肩を負傷。一瞬ひやっとしたが、痛みをこらえ出場。今思えば、ここで交代したほうがまだきれいな最後だったかもしれないが…

延長になってもフランス攻、イタリア守の流れは一緒。
ドメネクがやっと動く。明らかに遅い。延長に残す枠は展開を考えても1つあれば十分であったはずだ。
しかもなぜここでトレぜゲなのか。今までほとんど使わなかったにもかかわらず。いつものサハが出場停止だったからフォワードの交代要員の序列が繰り上がったのだろうか。いずれにしても僕にはEURO2000のゲン担ぎのような気がしてならなかった。

そして、延長前半12分。サニョールのクロスからジダンがヘッド。並みのドラマならこれが決勝点になったはずだ。だが、まさに千両役者ブッフォンが掻き出して防ぐ。
そしてドメネクが最後のカードのヴィルトールを送り出した直後、今となっては世界中の誰もが知る「事件」が起きた。別に彼の頭突き自体は珍しいことではない。ただ、マテラッツィのどんな挑発を受けようと…なぜこの舞台で…あと数分感情を押し殺せばよいだけだったにもかかわらず…

僕はただ、ショックだった。悲しいとか残念とかそういう感情はなかったが、衝撃的だった。。。言葉が出ない。

ジダンについて何も考えられないからか、この舞台でも悪役を地でいったマテラッツィに逆に笑ってしまった。

その後はフランスの勝ちを予想することはもはや出来なかった。もちろんPKという可能性はあったけれど、ジダンのいないフランスの歓喜するイメージが沸いてこなかった。


なんとも奇妙なファイナルだったように思う。

zidane